平成16年度重要判例解説用資料
(冒頭の + は渉外判例研究会で報告済み又は報告予定の裁判であることを示す。)
平成13年(その4)
- - 東京地判平成13・5・30(判タ1138号167頁)
- 中国人女性の戦争中の被害。日本国に対する損害賠償請求棄却。
- + 東京地判平成13・9・28(判タ1140号227頁)(2004-09-11 神前)
- ホンジュラス共和国で設立された株式会社の有する船舶が衝突・沈没した海難事故について、同会社の法人格を否認し、実質的に同会社の唯一の株主かつ代表者である者の責任を認めた事例。
- + 大阪高判平成13・12・21(平成13年(ネ)第310号更生債権確定請求控訴事件)(2004-11-13 森下)
- チェコ法人間のリース契約上の債務の日本法人による保証と無償否認、リース契約上の清算義務と準拠法
平成14年(その3)
- - 札幌地判平成14・11・11(判タ1150号185頁)
- 公衆浴場の経営会社が外国人の入浴を一律に拒否する方法によってなした入浴拒否を、不合理な差別であり社会的に許容しうる限度を超えているとして不法行為の成立を認めた事例。ただし、地方公共団体の責任は否定。
平成15年(その2)
- + 大阪高判平成15・4・9(判時1841号111頁、判タ1141号270頁)(平成16年度重判)(2004-06-19渡邉)
- 中華人民共和国人民法院の判決について、民訴法118条4号の要件を満たしているものと認めることはできない、としたもの。
- + 大阪高決平成15・4・22(家月56巻5号124頁)(2005-03-19 釜谷)
- 死亡した韓国人男性と事実婚関係にあった韓国人女性から、男性の相続人に対する財産分与等の申立を、時間の経過を理由に棄却したもの。
- - 東京高判平成15・7・22(判時1843号32頁)
- 東京韓国人従軍慰安婦等訴訟控訴審判決
- - 東京地決平成15・7・31(判タ1150号284頁)
- ナウル金融公社債事件の再審請求事件。「今日のように、国家の行う行為が、国家本来の主権的な行為に止まらず、国家が私人と同様の条件下において、商工業に関する取引行為や、公共事務に伴う営利行為の管理・運営を行っている現状からすると、国家の行為を公法的行為ないしは主権的な行為と私法的ないし業務管理的行為に区別し、民事裁判権の免除については、前者に限るものとし、後者については民事裁判権免除を認めないとする制限的主権免除主義を採用すべきである。」と明言した。
- - 東京地判平成15・8・26(判時1838号52頁)
- 外国親会社から付与されたストック・オプションの行使にかかる経済的利益が一時所得にあたるとされた事例
- - 名古屋地判平成15・8・29(労判863号51頁)
- 両足を骨折した不法就労外国人労働者の逸失利益について、本件事故がなければなお3年間は日本において就労可能であったとし、3年間については本件事故前3ヶ月間の平均賃金月額に基づき、その後67歳までは、本国において当該者と同じ学歴を有する男性の全産業全年齢平均賃金に基づいて算定した事例。
- - 横浜家審平成15・9・18(家月56巻3号68頁)
- 申立人が日本で出生し、国籍法2条3号の「父母がともにしれないとき」に該当するとされた事例。
- + 東京地判平成15・9・26(判タ1156号268頁)(2005-09-10 国友予約)
- 契約締結上の過失または不法行為に基づく損害賠償請求訴訟についてわが国の国際裁判管轄が否定された事例
- + 東京地判平成15・9・26(金法1706号40頁)(平成16年度重判)(2005-06-18 高杉予約)
- 信用状取引の準拠法
- - 東京地判平成15・9・29(判時1843号90頁、判タ1140号300頁)
- 旧日本軍が遺棄した毒ガス兵器の爆発で人身被害。国の国賠責任肯定。
- - 東京地判平成15・10・16(判タ1148号283頁)
- 国際海上物品運送法13条の責任制限と船主責任制限法に基づく責任制限手続の関係
平成16年(その1)
- + 最判平成16・1・15(民集58巻1号226頁、判時1850号16頁、判タ1145号120頁)(2004-09-11 高杉)
- わが国に不法に残留している外国人が国民健康保険法5条所定の「住所を有する者」に該当するとされた事例。外国人が同条の「住所を有する者」に該当するかどうかを判断する際には、その者が在留資格を有するか、その者の有する在留資格および在留期間が重要な考慮要素となるとし、在留資格を有しない外国人がこれに該当するとされるための要件について述べている。
- - 東京地判平成16・1・26(判タ1157号267頁)
- 国際商事仲裁協会仲裁裁判所の仲裁判断の取消
- + 東京地判平成16・1・26(労判868号90頁(判例ダイジェスト))平14(ワ)24348号損害賠償請求事件(2005-11-19 小川和茂)
- 労働契約について、カリフォルニア州を仲裁地とする仲裁条項を有効とし、解雇を不法行為として損害賠償を請求した訴えを却下した事例(インターウォーブン・インク事件)
- + 東京高判平成16・1・29(判時1848号25頁、判タ1146号134頁、労働判例869号15頁)(2004-06-19駒田)平14(ネ)6451号各補償金請求控訴事件
- 日立製作所職務発明事件控訴審判決。
- + 東京地判平成16・1・30(判時1854号51頁)(平成16年度重判)(2004-09-11 山田恒久)
- フランスで婚姻生活を営んでいた夫婦につき、日本人妻からフランス人夫への離婚請求等について、わが国の国際裁判管轄を認め、離婚および親権者指定を行い、慰謝料請求を一部認容した判決。国際裁判管轄の判断にあたって、夫の暴力により「原告が被告の住所地国であるフランスに離婚請求訴訟を提起することについては、原告の生命、身体が危険にさらされるという事実上の障害」があると述べている点が注目される。
- - 東京高判平成16・2・19(判時1858号3頁、労判871号54頁)
- 外資系日本子会社の従業員に対し親会社から付与されたストックオプションの権利行使益は、所得税法上給与所得にあたる。
- + 東京地判平成16・2・24(判時1853号38頁、判タ1147頁111頁、労判871号35頁)平14(ワ)20521号特許権持分移転登記手続等請求事件(平成16年度重判)(2005-03-18 申美穂)
- 味の素アスパルテーム職務発明事件。職務発明に係る特許を受ける権利の承継の対価について、使用者と従業者の雇用契約の準拠法によるとし、雇用契約の準拠法を日本法とした上で、「なお、いずれの準拠法選択をした場合であっても、絶対的強行法規の性質を有する労働法規は適用されるべきであるところ、特許法35条もまた、上記の性質を有する労働法規と解される。」とした。
- + 東京高判平成16年2月25日(裁判所ウェブに掲載、平成15(ネ)1241号損害賠償等請求控訴事件)(2005-09-10 的場)
- + 名古屋高判平成16・3・23(裁判所ウェブに掲載)(2005-1-22 早川吉尚=草間裕子)
- ブラジル人夫婦について離婚請求を認容
- - 東京地判平成16・3・29(労判875号21頁)
- 東急エアカーゴ事件。米国子会社代表取締役への報酬に対する米国の公租公課の負担についての税還付金と不当利得
- + 東京高判平成16・3・30(金法1714号110頁)(平成16年度重判)(2005-06-18 高杉)
- 上掲東京地判平成15・9・26の控訴審。
- - 大阪地判平成16・4・15(金判1203号43頁)
- 外国為替証拠金取引。仲裁契約。
- + 大阪高決平成16・5・12(家月56巻10号56頁)(2005-11-19 多田)
- 韓国法により、母の子らに対する財産管理権の喪失を宣告した事例
- + 東京地判平成16・5・31(判タ1175号265頁、判時1936号140頁)(2005-1-22 中山真里)
- 著作権に基づく差止め及び損害賠償請求の準拠法
- - 最判平成16・6・24(判時1872号46頁、判タ1163号136頁)
- 米国特許権を有する外国法人へのロイヤルティ支払いと国内源泉所得
- + 最判平成16・7・8(民集58巻5号1328頁、判時1870号3頁、判タ1163号107頁、家月57巻3号104頁)(平成16年度重判)(2004-11-13織田)
- 新国籍法施行後、平和条約発行前に朝鮮人男性により認知された者の日本国籍
内地人女性の嫡出でない子であって新国籍法施行後に朝鮮人男性により認知された者は、平和条約の発効によっても日本国籍を失わないとされた事例
- + 広島高判平成16・7・9(判時1865号62頁)(2005-06-18 中西)
- 戦時中の強制労働に基づく建設会社に対する損害賠償請求が認容された事例
- - 大阪高判平成16・7・29(金判1201号33頁)
- 外国税額控除。法人税更正処分等取消を認容
- - 東京高判平成16・8・4(労判880号167頁(判例ダイジェスト))
- ストックオプションと給与所得
民集57/5-57/11, 58/1-4
家月56/1-12
判時1837-1857-1873
判タ1134-1150-1163
金判1181-1196-1206
金法1695-1726
労判858-880